「やっぱりあんなことをしてしまったから……」そんな想いに惑わされ始めたルクへ、あたしは咄嗟に「違うの!」と叫んだ。潤んだ翠の双眸は、それでも怯えるように見開かれていた。

「違うの、ルク……そんなんじゃないから心配しないで! ルクにもエルムとあたしの会話は聞こえていたのよね? あの時思ったの、サリファに縛りつけられているエルムを助けられるのは、もしかしたらあたしだけなんじゃないかって。だから……ルク、お願いがあるの。パパの所へ行って『ラヴェンダー・ジュエル』を取ってきてほしいの。もしまだピータンの身体の中にあったら、ピータンごとでもいい。ねっ、お願いよ! ルク!!」
「ルヴィ……」

 あたしはエルムに謝った時のように両掌を合わせて、ルクに向けて懇願した。

 ルクはあたしの名を呟いたきり押し黙ってしまう。

「リル、どちらにしても今は此処から離れた方がいい……それに『ジュエル』を手に入れたいなら、リル自身で行った方が……」
「ううん! あたし、まだまだエルムの言ったことを全部は理解出来てないの。でもアッシュはきっと色々分かったのでしょ!? 今はそれをちゃんと理解して、ちゃんと整理して……次の行動に移したいの。そのためにはアッシュの協力が要る……ルクがジュエルを手に入れて戻るまで、あたしにはその時間が必要なの!!」
「……」

 あたしの必死な訴えに、アッシュも言葉もなく俯いてしまった。

 エルムはきっと相当なエネルギーを使って、あたしの前に出てきてくれたんだ。だからこそこうしてサリファも消耗している。このチャンスを(のが)すわけにはいかなかった。今知ることの出来る情報を、しっかり理解しておかなくちゃいけない。