「うん……それでこそ『サー・ルクアルノ』だね」
「アッシュ……」

 呆然自失するあたしを横目に、アッシュとルクは……まぁ、何と言いますか……「良い表情」で見詰め合っていた。何だろう、この感じ……何か見えない絆で結ばれたような、堅固な信頼関係が築かれたような……とにかく何だか「イイカンジ」だ。

「じゃあ、ルク、これから言うことを良く聞いてくれ。まずサリファのことだけど、今相当に弱っているのだと思う。僕達を覆う赤い膜が、時々まだらに明滅しているのは分かる? で、光が暗くなる時、部分的に穴が開いているみたいなんだ。その瞬間を見極めてリルと一緒に逃げてほしい……いいね?」
「えっと……でも……」

 最後の言葉にルクが戸惑いを示して、あたしもいい加減落ち着きを取り戻した。それってまた……アッシュは独り犠牲になろうとしているってことなの?

「さっきから格闘しているのだけど、残念ながらこの扉が開かなくてね……赤い膜の方がこれだけおろそかなのも、僕さえ確保出来ていればいいと思っているからなんだと思う。だからこちらに構わず行ってくれないか? 此処で手をこまねいている場合なんかじゃない」
「う、ん……」

 ルクの返事は歯切れは悪いものの、早く行かねばと腰を浮かせてこちらを向いた。申し訳なさそうに、あたしに右手を差し出してみせる。「ルヴィ、行こう」そう訴えるルクの瞳に、けれどあたしは(かぶり)を振った。

「ルヴィ……?」
「……ごめん、ルク。あたしもココに残る」
「──リルっ!?」