瞼の向こうの眩しさが和らいだ気がして、あたしはそっと瞳を開いた。

 少しずつ鮮明になってゆく視界が見せてくれたのは、先程まで脅威に晒されていたおばあちゃんの寝室だ。エルムが現れる前のように、天蓋の支柱は床に転がったままだった。

「あっ……アッシュ!? アッシュ!!」

 折れた支柱の根元にも変わらずカプセルがもたれ掛かっていて、その中でアッシュは気を失っているようだった。

「う……ん。あ……リル?」
「大丈夫!? アッシュ?」

 ココへ飛ばされた時と反対にあたしの呼ぶ声で目覚めたアッシュは、少し()だるそうではあったけれど、しばらくしていつもの調子を取り戻した。

「残念ながら、まだサリファの手中みたいだね……」
「えっ?」

 カプセルの中から見上げるアッシュの視線の先を仰ぐと、確かにある筈の天井は見えず、代わりにドーム状の赤い膜が、まるであたし達を鳥籠に閉じ込めるように覆い尽くしていた。

「でも、どうやらサリファは力を消耗しているみたいだ。赤い光に力強さが感じられない。僕達三人を繋ぎ留めておくことで力を使い過ぎたのか、それともエルムが現れたことで何かしら影響を受けたのか……」
「アッシュ……? えぇと……エルムって!?」
「うん。僕にもリルとエルムの会話が聞こえたんだ。「あちらの世界」に呼ばれたのは、リルだけだったみたいだけど」
「……!」

 あたしはほっとしたように大きく息を吐き出した。エルムの存在、エルムから聞かされた過去……全ては夢ではなくて、本当のことだった! 何よりアッシュが聞いていてくれたとなれば、そこから導き出されることがきっとこれからのヒントになる筈!!

「リル、サリファが弱っている内にまずは逃げよう。悪いのだけど、ルクを起こしてくれる?」
「え? あ……ルクって、何処にいるの?」

 先程見渡した限りでは、ルクは視界に入らなかったのだ。それでも「あそこにいるよ」とアッシュが目で教えてくれたのは、あたしが眠っていた寝台の足元。ルク自体は見えないけれど、こんもりとまあるく布団が盛り上がっている。