──あー……ごめんね、リル、ヴィ……アタシ……もう、ちょっと、眠くなって……きちゃった……
「えっ!?」

 途切れ途切れ何とか言葉を紡ぐエルムに目を向ければ、涙を(ぬぐ)っていた筈の可愛い指が、眠気眼を(こす)るように、両目をゆっくり端から端へと左右に行ったり来たりしていた。

「あ、ねっ、ちょっと待って! エルムが寝ちゃったら、サリファが出てくるってことでしょ!? サリファはどうしたらやっつけられるの? ジュエルがいれば、何とかなるの!?」
 ──んー、えっとね……ぇ……
「エルム~!!」

 まだまだしっかり理解出来ていないのに! まだまだ訊きたいことが沢山あるのに!! 

 ──お願い、リルヴィ……シュクリ、を、もう、哀しませたく……ないの……、だ、から……ジュエルに、どうか……ジュエル、を……
「エルム、起きて! ジュエルをどうしたらいいの!?」

 益々眠りに落ちそうなエルムを励ましつつ、あたしは小さくなっていく声に耳を澄ました。

 ──ジュエルを……「本当の名前」で、呼んで、あげて……
「本当の、名前?」

 辺りを取り巻いている金色の光が徐々に眩しさを増して、エルムの姿が光に消え、唯一最後に聞こえた言葉は──

 ──……「リトス=ヴェル……=デリテリート」って……
「リトス=ヴェル=……」

 「デリテリート」──!?