──あ~ごめん! ちょっと脱線しちゃった。とにかくリトスはシュクリ山の神様にお願いして『ラヴェンダー・ジュエル』になったの。どうしてラヴェンダーなのかは、お姉ちゃん達の作ったお供え物がとても素晴らしかったから。そして……アタシ自身がその『種』になったから、だよ……
「……種?」

 頬にほんのり赤みを残したまま、エルムはこちらを見ながらはにかんだ。

 種って何の種だろう?

 ──アタシのお家はラヴェンダーの種を育てていたの。ヴェルで育つラヴェンダーは、みーんなうちの種から育ったんだよー……
「え? えー!」

 エルムの家系も……ラヴェンダーに関係してたんだ!!

 ──アタシはお家があった場所から、種をぜーんぶ探し出したの! それを抱えてシュクリに登って、お祈りしながら火口に飛び降りたら……シュクリがね、アタシをお嫁さんにしてくれたんだー……
「ええっ!? えええええーーーーー!!」

 エルムの話す内容が驚くことばっかりで! あたしは「え」しか言えないまま固まった!!

 エルムはシュクリの神様のお嫁さん……ってこと!?

 ──それから大切に大切にシュクリと二人で種を育てて、芽吹いたラヴェンダーは不思議な力を持つようになったの……『ジュエル』になったリトスに魔法を与えるラヴェンダーに……
「……」

 余りの驚きにあたしはもう返事も出来なかったけれど、少しずつ『過去』が『今』へと繋がっていった。

 種を採って育てる花農家の娘……エルムは全ての種をシュクリに捧げ、二人に育てられたラヴェンダーは魔法の力を持った。そこから三人のお姉さん達によって、現代のようにジュエルに力を与える『薬』と『染粉(そめこ)』と『香水』が作られ……ラヴェンダー・ジュエルを宿すヴェル王の魔法の元となった──!!