「リル……ルヴィ……」

 誰かがあたしの名前を呼んだ。だあれ? 今のは……パパとママなの??

「リル……ルヴィ……」

 もう一度聞こえた声に、ふと瞼を開く。淡い(もや)の掛かったような白い視界。って……ココどこ? 確か飛行船のカプセルで眠っていた筈なのに……??

「リル、ルヴィ……」

 繰り返されるのは、あたしの二つの愛称だ。「リル」と「ルヴィ」。リルと呼ぶのはパパともう一人しかいない。そしてルヴィもママともう一人……もうヴェルに着いたんだろうか? 『二人』があたしを呼んでいるの??

「リル、ヴィ……」

 けれど二つの愛称は、四度目で本当の名前になった。この名で呼ぶ人は沢山いるけれど……何だかいつもと違う気がする。

「リルヴィ……」

 おばあちゃん……?

 最後の声はとても遠くに聞こえた。きっとおばあちゃんだ! でも……行ってしまうの!? 待って……! あたしに『宝物』の()()を教えて!!

「おばあちゃん……!!」

 叫びながら声の方向へ走り出す。

 そこであたしはカプセルの側面に……思い切り頭をぶつけていた──!!