すると『名もなき少女』はクスりと笑って、

 ──きっと大丈夫だよ……だってアタシ達、同い年だもん! 難しい言葉なんて使えないから心配しないでー ……
「わっ、本当~「だもん」って言うんだね! ──あっ! いやっ、その……ごめーん!」
 ──あーううん。この口癖治らないんだよね~ ……

 ついツッコんでしまったことに、あたしは慌てて謝った。両掌を合わせて頭を垂れたあたしに、彼女は吹き出すようにコロコロと笑って、あたしも一緒に笑い合った。

 ヴィジョンで観たままと変わらない純朴な雰囲気。この幼さを残した少女がサリファだなんて、やっぱり違うに違いない!

 ようやく笑いを止めた『名もなき少女』は、猶予がないことを思い出したのだろう、コホンと一つ咳払い、脳内を整理するように話し出した。

 ──えぇと……まずね、アタシの名前はエルムっていうの。でも本当の名前はもう忘れちゃった……エルムはシュクリ山の神様がくれた名前よ……アタシはシュクリを守る神様の使いなの……
「神様の……使い?」

 天使様、ってことだろうか?

 あたしは軽く首を傾げた。

 ──うーん、あんまり細かいことは気にしないで。ジュエルがあなた達に見せた通り、お姉ちゃん達とアタシは一回目の『町狩り』で、リトス──えっと「後々ジュエルになる人」ね──を助けたんだ。でも二回目の町狩りで、また沢山の人達が死んじゃって……とうとうリトスはこの国を魔法で守ろうと、ジュエルになることを決めてしまったの……