──起きて……リルヴィ……目を覚まして……

 まただ。また、誰かに起こされようとしている。でもアッシュじゃない。ルクじゃない。パパでもママでも……じゃあ、この声は?

 同い年くらいの女の子の声だから……えーと、あたしのクラスメート? なんて訳ないか。だったら知らない誰か? ううん、一度だけだけど聞いたことのある声だ。そう、この可愛い声は──

 ──良かった……無事、みたいね。破けたシャツも直しておいたよー……
「え? わ! ホントだっ、ありがとう!! って……ココ、どこ? アッシュとルクは!? それにあなたは……」

 目を開いて咄嗟に起き上がったけれど、気絶する前に見えた眩しい光の中、安堵する少女の姿だけが見えた。

 ──時空の狭間、次元の狭間? 良く分からないけど、リルヴィの住む世界とは違う所。二人はちゃんと無事でいるよ。アタシは……ツパイが説明したから分かるでしょ? あなた達が言ってた『名もなき少女』……
「う、うん……」

 確かに『ジュエル』が見せてくれたあの『名もなき少女』だ。それじゃあ彼女は……サリファってこと?

「あ、あの……サリファは?」

 光に包まれる前に、確かサリファは誰かに怒りをぶつけていた。それがこの子ならば、彼女はサリファじゃないってこと、よね?

 ──サリファは今アタシが何とか封じ込めてるの。でもそれが出来るのはほんのちょっとの間だけ。その内には目を覚ますから、それまでに話したいこと全部話すね。だからリルヴィ、頑張って聞いて……
「う……うん」

 少しだけプレッシャーを感じて、あたしは返事を言い淀んだ。まだ混乱の治まらないあたしに、彼女のこれから話す内容をちゃんと理解出来るだろうか?