『涙に濡れた王女様っていうのも、ういういしくて良いもんだねぇ……さぁ、お前はどんな風に抱かれたい? やっぱり初めは優しくされたいか? それとも強引に奪われたいか!? お望み通りにしてあげよう』
「……んんっ──!」

 ほどかれたウエストからキャミソールの裾が抜かれ、ルクの掌があたしの鳩尾(みぞおち)に触れた。思わず全身が(こわ)ばり身をよじる。キャミソールをたくし上げようとする手に、抵抗したくてももう力が入らない。ただひたすらすすり泣き始めたあたしの胸元に、落ちた雫はあたしの涙かと思われたけれど、瞳を向けた景色は先刻とは違っていた。

「ルク……?」

 ルクの手は止められ、胸の上で硬直した顔から、ぽたぽたと涙が零れ落ちていた。ルク……きっと奥底では意識があるんだ……きっとサリファの力に抵抗しようともがいてるんだ!
 
『おおぅ……ルノよ、リルヴィを我が物に出来て、泣くほど嬉しいのは分かるが、手を止めていては始まらないぞ?』

 サリファの嘲笑うような言葉に、ルクは涙を流しながら全身を震わせた。力の込められた手が時々あたしの肌に触れては離れ、ルクが身体の中で必死に(あらが)っていることが感じられた。

『さぁ、お(あそ)びはこの辺で終わりだ。ルノ、そろそろ本気を出せ……』

 サリファの愉しげな口調が息を潜め、畏怖を放つ暗い声色に変わったその時──

「目を覚ませっ! 『サー・ルクアルノ』!!」

 アッシュの声が、あの夜道でルクを勇気づけた騎士(ナイト)の呼び名を叫んだ!

 途端ビクンと大きく反応し、動きを止めるルク──もしかして自分の身体を取り戻したの!?