「サリファ……ルクを返して! 早く二人を解放して!!」

 サリファはルクにニヤニヤとさせながら近付いてきた。いつもと違う気持ち悪さを感じたあたしは、寝台の上を極力後ろへ下がろうとしたけれど、すぐに幾つも重ねられた枕の壁に突き当たった。

『言ったろう? ルノは「任務」を終えれば返してやる……が、アシュリー、お前もしつこいねぇ……そんなに二人の睦言を聞きたいか?』
「「むつ……?」」

 ルク(サリファ)はついに寝台の足元までやって来て、端に腰かけながらアッシュにいやらしく笑ってみせた。

 「むつごと」というのがあたしには分からなかったけれど、どうやらアッシュはその意味を知っているらしい。そして……その理解と同時に戦慄した。

「そう……いうこと、か……おばさんが曖昧に「惨いこと」と言った意味がようやく分かった。サリファ、それだけは……どうか、やめて、ください。僕に出来ることなら何でもします! ですから!!」
「アッシュ!?」

 今にもカプセルを倒しそうな勢いで、アッシュはサリファに嘆願した。どうして急に敬語になったの? どうしてまた身代わりになろうとするの!?

『お前もルノも、そしてリルヴィ、この可憐な()()様も、もちろん「初めて」であろうなぁ? かつて多くの王に愛されてきたわれが、手取り足取り教えてやろうというのではないか……お前も勉強になるであろう? 其処で瞬きせずに愉しめばいいさ』
「お願いですっ! どうか……どうか考え直してください!! 僕の身体でも何でも、出来る物は全て捧げますからっ!!」
「アッシュ……」

 サリファの言っている意味が分からなくても、アッシュの焦燥からこれから始まる何かが「死よりも惨いこと」であるのは想像出来た。でも、どうしよう……アッシュはカプセルから出られないし、あたしもこの鎖、外せないよぉ!!