「でも、あの、ルクはどうするの? サリファに乗っ取られたままじゃ……」
「今の状況では僕達だけじゃダメだ。応援を呼んだ方がいい。此処が本当に王室なら、合流するのも(やす)いかも知れない……それに、おばさんの言った言葉が気に掛かるんだ……『死よりも(むご)いこと』というのが。リルをそんな脅威には晒したくない」

 死よりも惨い……死よりも、なんてこと、他にあるのだろうか?

「アッシュはそれが何かを知っているの?」
「いや……正直分からない。でもいつも冷静なツパイおばさんが、あれだけの狼狽を見せたんだ。警戒するに越したことはない」

 アッシュは神妙に呟いて、ともかく脱出しようと足元の扉に手を掛けた。

 緊急用脱出シューターの出入り口は、奥の頭部側にパラシュートが設置されているため足側にある。

 アッシュが入れられたカプセルは現状「立って」いるので、扉を開けるには横倒しにする必要があるけれど、どうもそんなことくらいで簡単に開きそうにはないらしかった。

「参ったな……サリファが細工したみたいだ。リルの鎖も解かないといけないし……何か金属に勝てそうな工具とか近くで見つからないかな?」

 アッシュの言葉にあたしも動ける範囲から、道具になる物を見つけようと試みた。

 でもそんな悠長な時間、案の定続く訳もなくて──

『ご苦労様だねぇ……さて、そろそろ出番といこうじゃないか、ルノ』
「「サリファ……!」」

 回廊へ続く扉の向こうから、ルクのままのサリファが現れた──!!