「アッシュ! 大丈夫!? えっ……やだ、何これ……どうなってるの!?」
「リル、落ち着いて……あんまり引っ張ると手首がすりむける」
「あ……」

 動くと共に金属音がジャラジャラと耳障りに響き渡って、両手首が鎖で繋がれているのだと理解した。鎖の先を辿った視線が、左右に見える木製の細い柱に行き着く。寝かされている柔らかな布の手触り、支柱の繊細な彫刻、そして女性らしく小花の散りばめられた可憐な文様の天蓋は……これ、きっと王家のおばあちゃんの寝室だ!

「アッシュ……一体どうして?」

 徐々に状況を把握したあたしは、カプセルの向こうのアッシュに問い掛けた。鎖で繋がれているけれど、それなりに長さがあるので何とか身を起こし、行ける所まで寝台の端に近付いた。

「二人が消える瞬間、ビビアンさんに赤い光の上まで放り投げてもらったんだ。お陰でリル達と一緒に此処まで来られたけど、サリファは同時に先生のカプセルまで転移させたらしい。そんなことより……」

 そこまで話して一度歯を喰いしばったアッシュに、一瞬あたしの身体が震えた。初めて見せる憤怒の表情……それは明らかにあたしに向けられていた。