「リル……リル……──」

 自分の名を呼ばれて目覚めるのは、もう何度目だろう?

「リル! リルっ!!」

 けれどその声色は、いつもの穏やかで優しいものではなかった。とても深刻そうで、とても必死で……あたしの意識も無理矢理引き寄せられるように覚醒した。
 
「ん……」
「リル! 大丈夫か!?」

 自分の右耳に吸い込まれた名を、奏でていたのはアッシュの声。

 僅かに開いた瞼から見えるのは……鍾乳洞の天井じゃない。アッシュが火口下のあたしの許へ飛ばされた時のように、きっとあたしも何処かへ飛ばされたんだ。そして呼び掛けるのがルクじゃなくて、アッシュだっていうことは……?

「……ア、アッシュ!?」

 あたしはようやく瞳をまともに機能させて、すぐさま声の方向へ顔を向けた。

 一気に鮮明になった視界には、同じようにこちらを心配するアッシュ。でもその身体は飛行船の脱出用シューターらしきカプセル状の空間に閉じ込められている。