『アシュリー、さぁリルヴィの手を放せ……フフ、安心をし。二人は丁重に扱おう。何せわれを甦らせる大切な二人であるからのぉ……』

 ルク(サリファ)は含み笑いのような声を洩らして、アッシュの目前の切っ先をユラユラと揺らしてみせた。握るあたしの手が力を抜いたことに気付いて、悔しげにルクを睨みつけるアッシュの瞳が哀しげにあたしに移された。

「やめなさいっ! リルヴィ!! やめるのですっっ──」

 向けていた背に叫び続ける声が、一層の動揺を抱えながら近付いてきた。ツパおばちゃん……喉の奥から絞り出された声は、心からの懇願だった。まるで声帯を潰されたかのような濁りの混じった声音に、一瞬あたしの心に惑いが生じた。こんなに苦しいおばちゃんの声、未だかつて聴いたこともない……おばちゃんにこれほど辛い想いをさせてしまったあたしに、いつか顔向け出来る日は来るのか……そう思うと、どんなに叫ばれても振り向くことさえ出来なかった。

「リ──っ!!」

 おばちゃんの気配が真後ろまで迫った時、ルク(サリファ)があたしの手を放し、自分の髪をザッと一束乱暴に引き抜いた。息を吹きかけながら投げられた赤茶色の髪が、あたしの上空で十数体のザイーダと化す。ドスンと大きな振動と共に背後に降ってきた化け物達は、一斉にツパおばちゃんに襲いかかろうとした。が、その寸前に半数はビビ先生の矢で、またその半数はアッシュの剣で倒れ伏した。

 残された四分の一との格闘に、愕然とするあたしへ近付く影──ルク(サリファ)