二人と繋いだ自分の両手に力を込める。ルクの左耳近くの地面には、ビビ先生の投げた矢が突き刺さっていた。

 このドーム状の空間の出口は、あたし達が入って来た通路の対角にあった。だからアッシュはあたしを(いざな)って、最短に当たるルクのすぐ横をすり抜けようとしたのだ。けれど通り過ぎる瞬間ルクの左手を掴まえたあたしは、同時に連れ出そうとするアッシュの左手も引き寄せていた。

「リ、リル!? ダメだっ!!」
「リルヴィ! よしなさい!!」

 アッシュとツパおばちゃんの焦燥の叫びが共鳴する。ルクの表情も驚きを示していたけれど、それも一瞬の内に邪気を(はら)んだ(わら)いに変わった。

「いいの。あたしはツパおばちゃんとは違う……死ぬつもりなんてないもの。誰も死なせたくないもの。だからそれを条件にする。サリファ、取引はこのヴェルにいる全員の命の保証よ。それが約束されるのなら、ルクを解放してあたしの身体を使って!」
『ほぉ……賢い選択だ』

 ルク(サリファ)は身を起こしながら、感心したように息を吐いた。立ち上がるや、放られた剣を魔法で呼び寄せ、それぞれ取り戻した自分の得物を、ルクとアッシュがお互いの首元に突きつけ合った。