「何を言われても仕方がありません。ですが私の肉体でも十分でしょう? ルクアルノとリルヴィには、これ以上手を出さないでください」
『ふん……血を分けた肉体と思えば、お前でも構わぬのだろうがな。そんな及び腰の身体など、こちらから願い下げだ。第一お前を乗っ取った途端、お前は自身で首を掻くのであろう? そうなればさすがにわれもこの世に留まれない……が、十四では自害に及べぬほど、お前も我が身が可愛かったか? われの寿命以上に生きて、やっと決心が着いたと言うのか?』
「……」

 おばちゃんは……サリファもろとも命を絶とうとしている?

 あの「禁じ手」と言ったおばちゃん自身が、まさにそれを実行しようとしていた。従兄の従姉であるおばちゃんも、パパとピッタリ重なり合った。嫌だ……どうしてみんな自分を犠牲にしようとするの? 誰かが死ななければ、この良く分からない因縁から誰も解き放つことは出来ないの!?

『ノーム……とにかくお前には、もう存在の意味も意義もない。リルヴィ、最後の選択だ。われと取引をしよう』
「……取……引?」
「ダメです、リルヴィ! 師よ、早く二人を連れてお逃げください!!」

 初めて聞いた荒げる声が響いて、あたしの胸の内には様々な想いが駆け巡った。ココで逃げたら、ツパおばちゃんはきっとルクのために命を捧げてしまう。でも今サリファは最後のチャンスを与えてくれている。あたしが、あたしなら! 『ジュエル』の力を得たなら、もしかしたら!!

「ツパイ、悪いのですが……わたしは行けません」
「え……?」

 その時あたしの隣ずっと上から降ってきたのは、正対称に落ち着き払った低い声だった。ビビ先生はあたしの手を握り締めたまま、その身をカプセルの影から現した。

「わたしがこの二年で貴女に教えたのは、命を賭してまで勝つことではありません。生きてこそ勝利はある。貴女が命に代えてルクアルノさんを守っても、彼は悲しむだけでしょう」
「し、しかしっ!」
「貴女が死ぬ覚悟である以上、わたしは此処から動けません」