『笑わせるな、ノーム……今更お前の肉体など不要だ』

 立ち尽くしたアッシュと(あざけ)ルク(サリファ)の狭間で、ツパおばちゃんは背を丸め微動だにしなかった。

『お前はわれが求めた時、自ら時を止めて十四に満たずにいたではないか。それはこうなることを見越していたからであろう? だったら逃げたままでいれば良い……裏切り者にもう用はない』

 十四に満たずに……その言葉に引っ掛かった。

 あたしの年齢、ルクの年齢、そしてあの「名も知れぬ少女」の年齢。サリファは十四年を越えた肉体が必要だった?

 ツパおばちゃんは十四歳になって、肉体を乗っ取られるのを回避するために……自分から四日の内の三日間を眠り続けて、その時を遅らせていたということなの? 確かにパパ達がウェスティを倒した時も、おばちゃんの身体はまだ十歳程度だった筈だ!

『お前の母親を乗っ取って、わざわざお前を産んだというのに……とんだ邪魔者を作り出してしまったものだね。お陰でスティに力を注ぎ損ねた。不出来な子を持つと苦労するものだが……その分可愛いと感じるのは母性本能というものか?』

 クックック……見下した嗤いが響き渡る。

 サリファは一体何を言っているの……?

 「お前の母親」って、ツパおばちゃんのお母さんのこと? サリファは先にツパおばちゃんのお母さんに乗り移って、ツパおばちゃんを産んだというの? それから王妃となったツパおばちゃんの叔母「サリファ」になり、王様との間にウェスティを産んだ?? そんな……そんなことって……今ルクを乗っ取っているサリファは、どんな化け物だというの!?