そそり立つ、幾筋もの線を描く石灰岩の壁の向こう、真白い光が上方から注いで、まるであたし達を待ち構えているようだ。

 ゆっくりと進み、境界となる壁際にもたれて先の様子を窺う先生の隙間から、あたしも明るい景色を目に入れた。

 今までの狭い通路とは違って、大きく開放的な空間が広がっていた。天井はボウルのように丸みを持って、中心が一番高く一番明るい。幾つか穴でも開いているのだろうか。外からの光が零れ落ちているのか、放射状の白いラインが地面を眩しく照らしている。囲む岩壁は変わらず美しい鍾乳石が水を刻んで、あたかも何処かの王宮博物館みたいな華やかさだった。(みち)に並行していた溜まった地下水は、壁に沿って小川となり静かに流れていた。

 ほんの少しであったけれど、『ジュエル』が見せてくれた遥か昔、四人の少女達が身を隠したあの洞穴に似ている気もしないでもない。

 サリファはこのドームの何処かに隠れているの? ルクはそんなサリファに囚われているの? それとも二人共ココにはいない可能性もある。まだあたしには全く赤い光線は見えないし、目の前のビビ先生も、隣に並んだツパおばちゃんとアッシュも、この先どうすべきかを決めかねているみたいだった。

 聞こえるのは緩やかな小川のせせらぎだけ。見えるのはドレープのような乳白色の彫刻の壁と、ステージを彩る何十ものスポットライト。その光の中心が……微かに揺らいだ?

 白い光線を全身に受けて、その人物は現れた。

 赤茶色の艶やかな髪、薄緑色のまあるい瞳、身丈はあたしと変わらないけれど、その姿はいつになく凛として──



「みんな、出て来て。大丈夫だから! ボクだよ……「リルヴィ」」



「……ルク……?」

 光の中から現れたのは、あたしを「リルヴィ」と呼ぶルクだった──。