「リルヴィ、この鍾乳洞はしばらく続きますから。気を抜かず師について行ってくださいね」
「あ、はっ、はい!」

 最後尾のツパおばちゃんから(いまし)められて、あたしは慌ててビビ先生との間合いを詰めた。この鍾乳洞の何処かでサリファはあたし達に攻撃を仕掛けてくるに違いない。その時どうにか「乗っ取られていないルク」に会えて、上手く合流出来たら良いのだけど……。

「この先、微かに明るいのが分かりますか? あの辺りが鍾乳洞のちょうど中心になります。おそらく一番危険な領域となりますから……準備は宜しいですね?」
「……はい、ビビ先生」



 それから一時間ほど歩いた頃、左へ折れ曲がる石壁の向こうから、先生の言う通り光が差し込んでいた。振り返り差し出してくれた分厚い左手に、震える右手を伸ばして頷く。包み込む温かな掌は、あたしに勇気を与えてくれた。

「良いですね、リルヴィ? 師の手は何が遭っても絶対に離さないでください。アシュリー、師よ。私がルクアルノの救出を無理だと判断した時点で、二人は必ずリルヴィを連れて逃げてください。どうかお願い致します」
「……分かりました」

 背中に掛けられたツパおばちゃんの懇願に、ビビ先生はもう一度振り返って応答した。アッシュは小さく首肯(しゅこう)したけれど、声を出すことはなかった。万が一そうなってしまったとしても……本当にそれが正解と言えるの?

「では、参りましょう」

 おばちゃんの号令に、全員が行く先へ身体を向けて、得物をひとたび構え直す。あたしもギュッとビビ先生の手を握り返した。見下ろした先生の柔らかい眼差しに、真剣な瞳を上げて合わせた。