「……十四歳です」
「わたしは今二十八歳です。リルヴィさんはちょうど半分、わたしが貴女の歳には、こんな朝早く起きられませんでしたよ」
「え、そうなんですか? あ、でも……」

 先生が胸元から取り出した懐中時計は、午前五時半を示していた。確かに……どんなに早朝用があっても、こんな時間に自力で起きられた試しはない。

「それは余程気持ちが張り詰めている証拠です。貴女はこの数日の間、沢山の心配をしてきました。お母さんとお父さんと仲間と……そして今はルクアルノさんの。それだけで十分、十四歳の貴女の心は頑張っているのだと思いますよ。そしてその想いは皆さんの心に届いています。わたし達はそれに応えているだけ……だから貴女は自分を卑下などせず、むしろ誇りに思ってください。貴女の存在は沢山の仲間を奮い立たせ、その愛らしい笑顔は皆さんを励ましている。貴女はご自分を「もう」十四歳だと思うかも知れませんが、わたし達にとっては「まだ」十四歳なのです。今の貴女は此処に居るだけで十二分の働きをしている、それをどうか納得されて、守られることを受け入れてください」
「守られることを……」

 ──受け入れる。

 それは昨夜ツパおばちゃんが語った言葉とリンクした。

『わたし達は全力で貴女を守ります。貴女にはそれに応える義務がある』

 いつか受け入れられるんだろうか? それがみんなにとっても自分にとっても一番良いことなんだって。

「ありがとうございます、ビビ先生」

 納得がいった訳ではないけれど、あたしは淡い笑みを浮かべて先生にお礼を言った。

 先生もこの気持ちに気付いて、今あたしが「理解した分」を満足したように頷いてくれた。