生まれてから十四年──あたしはずっと『ラヴェンダー・ジュエル』と共にあった。

 与えられた魔法は、唯一「()える」ということだけであったけれど。

「おばちゃん、知っているんでしょ? 本当はあたしにも『ジュエル』の力が使えるって。あたしにもジュエルの「跡」が残されているって──」

 三歳のツパおばちゃんはウェスティの花嫁候補に選ばれた際、年齢を近付けるためにジュエルの力で時間を止められた。その時『名前の呪縛』のことを知り、名前の後半「ノーム」を切り離せたのもジュエルの恩恵だ。

 ジュエルは力を与える時、必ず「跡」を残すと云う。だからおばちゃんは時を止める魔法を解かれた後も、自ら四日に三日は眠り続けるように、ジュエルと契約を結ぶことが出来たのだ。同じくジュエルから力を与えられたアイガーと、意思疎通が出来るようにもなったのもそのお陰だった。(註1)

 だから。あたしにもきっと出来る筈。視ること以外、何か役に立てることがきっと──。

「……これは、ラヴェルとユスリハの意志であったのです」
「え? パパとママの……意志??」

 「致し方なく」といった調子で語り始めたツパおばちゃんの言い出しは、あたしには理解が困難だった。

「二人が貴女をヴェルではなく、ユスリハの故郷で育てることに決めたのは、ジュエルの影響を最小限に留めたかったからでした。もちろん貴女が次期継承者の姿で生まれてしまった為、ジュエルから完全に切り離すことは出来ませんでしたが。ヴェルへの帰省も三年に一度と間隔を空けているのもそういうことです。二人は貴女に魔法とは無縁の、普通の生活をさせてあげたかったのですよ」
「普通の……」

 難しく思われた話の切り口は、ココまで聞けば意味も分かった。パパもママもジュエルを巡る騒動に巻き込まれなければ、きっと家族を失うことはなかったのだもの。だからこそ……二人は「普通」を望んだんだ。