「では参りましょうか。そのザックもお持ちしますよ、リルヴィさん」
「い、いえ……これくらい自分で持てますから! ……え? あの、それで一体何処に……??」

 担いだカプセルからツパおばちゃんと自身の弓矢セットを取り出し、ビビ先生は颯爽と暗い火口底を歩き出した。受け取った得物(えもの)を装着したツパおばちゃんが、あたし達にアイコンタクトして先生の後に続く。方角すら分からなくなりそうな岩だらけの中を、どうして迷いもなく進むことが出来るのだろう? アッシュとあたしは不思議そうに顔を見合わせ、二人の後を慌てて追いかけた。

「師は狩りを生業(なりわい)としているお方です。シュクリの広大な裾野の森は、まさしく彼の領域(フィールド)。かつて偶然見つけた洞穴の入り口より、この火口底まで辿り着いたこともあるそうですから……つまり、出口もご存知という訳です」
「「……え!!」」

 代わりに答えてくれたツパおばちゃんの説明に、アッシュとあたしは驚きの声を上げた。

 この空間、上の火口だけでなく、他にも出口があるんだ!

「只、かなり道が分かれている上に、上手く辿れたとしても、出口まで丸一日は掛かると思います。ですからどうかはぐれずについて来てくださいね」
「「は、はいっ」」

 ライトで仄かに照らされた大きな身体が、振り向きながら続きを語った。もう一度口を揃えたあたし達の真剣な様子に、ビビ先生は満足そうに微笑んで、前方へ向き直し歩を進めた。