「──いった!!」
「リル? 大丈夫??」

 小石を掻き分けていたつま先が、大きな塊に邪魔された。危うく転びそうになったので、両腕を振り回してバランスを立て直す。暗闇でもすばやく駆け寄ったアッシュに(なら)い、あたしも足元に腰を屈めた。

「やったね、リル! これ、僕達のザックの一つだ……てことは、多分此処に……」

 アッシュの手がザックのポケットから早速お目当てを発見した。ポッと音でも立てそうな勢いで、二人の間に光が灯る。あたし達はようやくお互いの様子を確かめることが出来た! 淡く小さな明かりでも、アッシュの端整で綺麗な容貌は変わらなく思えた。

「良かった……何処も怪我はなさそうだね?」
「アッシュも! でも、さっき打った胸は大丈夫?」

 ライトに照らされたアッシュのシャツは、胸元だけがしわくちゃだった。あたしが掴んだり押し付けられたりしたからだろうけど、あれだけ強く抱き締めることが出来たのは、きっと平気だって証拠よね?

「うん、心配要らないよ。このザック、二人が山を下りる際にルクに預けた物だ。近くにリルに渡したザックもあるかも知れない」

 アッシュは手にしたライトを周囲の地面にかざした。確かにもう一つ、あたしが背負っていたザックがぽつんと遠くに発見される。けれどそれを取りに行きながら辺りを見渡したアッシュは、他には何一つ見つけられことに至極ガッカリしたみたいだった。

「アッシュ……?」
「ああ……ごめん。剣も見つかればと思って。リルを掴まえた時までは、鞘に収めて身に着けていたんだけど……さすがにサリファに没収されたみたいだね」
「そう……」

 結局上手い返答も出来ぬまま、あたしも一緒に消沈してしまった。そんな自分にホトホト愛想が尽きてしまう。どうしてこうもダメなのだろう。残念そうなアッシュを元気づけられる気の利いた言葉の一つも思い浮かばないなんて。