「ルクの利用価値……」

 アッシュもそれがどんなことかは分からないみたいだった。でもサリファがそのヒントをくれる前に、アッシュは「ルクを選べ」ってあたしに言ったんだ。それはどうしてだったのだろう? 自分のことを二の次にしてまで、アッシュはどうしてルクを救おうとしたの??

「アッシュ……あたし、アッシュもルクも大切な家族だと思ってるよ。二人が一緒に自由になれなくちゃ、本当に嫌だって思ったから、あたしは「両方」って答えたんだ……なのに何故アッシュはルクを優先しろって言ったの? ルクの三年前の決意って何?? どうしてそのためにルクを助けようとしたの!?」
「リル……?」

 自由にされたあたしの両手は、気付けばアッシュの前身頃を掴んでいた。その力がいつになく強かったから、アッシュはあたしの名を疑問形で呼んだのだろうか? それともあたしの声が震えていたから?

「リル……泣いているの?」

 心配そうな小さな声にハッとする。問われるまで気付かなかった……元々ぼんやりとした視界が更に霞んだのは、涙が溢れている証拠だった。

 尋ねたアッシュの声は、誰かに似ているように思えた。誰かじゃない……パパ、だ。パパがあたしを心配している時の声色。いつになく重なった二人の音に、アッシュの心の色も薄っすらと浮かび上がった気がした。

「……タラお姉様が教えてくれたの。アッシュには憧れの人がいるって。それって……あたしのパパなの?」
「え……? ……う、ん」

 涙声の問い掛けに、アッシュは戸惑いながらも肯定した。そして思う。パパに憧れた理由と今回のアッシュの選択。それってもしかしたら──