ハテナだらけの心に、再び『究極の選択』が突きつけられた。あたしは一旦俯いて、パパのように拳をギュッと握り締めた。一つ静かに息を吐き、おもむろに二人の顔を見上げる。無言で「ルクを選べ」と諭すアッシュ。戸惑いを瞳に載せるルク。あたしにはどちらか一人だけなんて選べない。一緒に帰るなら三人同時でなくちゃ!

「答えは変わらない。サリファ、二人を返して。それが無理なら代わりにあたしを光に取り込んで!」

 元々あたしだけが奪われる筈だったんだ……二人が捕まっている必要なんて全くない!

『やはりお前もジュエルと同類か。まぁいい、どうせわれが復活すれば、全ては生きるも死ぬもわれの采配次第だ。リルヴィ、ジュエルを得るまでは、お前に生きていてもらわねばならぬ……その手段の為、アシュリーは手元に返してやろう。が、ルクアルノは預かっておくよ……利用価値はまだあるからな……』
「ちょっ、ちょっと待って! どうしてルクを──」
『三人を取り込んでおけるほど、まだ力が戻っていないということさ……』
「待って! サリファ!!」

 サリファの言葉が小さくくぐもり、途切れると同時に光も(にじ)んで消えていった。差し伸べた両手は何も掴めずに、ただ口惜しそうなアッシュの姿と、困ったようなルクの顔が、指の先で散りぢりに弾け飛んでいく。あの言葉の通り、これはきっと暇潰しの「(あそ)び」だったんだ……どっちを選んでも、あたしの願いなんて叶えられる筈もなかった。

「サリファの嘘つき……! アッシュは手元に返すって……一体何だったのよ……」

 再び真っ暗闇になった火口底の真中、嘆きながらうな垂れてしまう。

 顔を向けても見えない足元から、石の擦れ合うような響きが起こり、それから何やらゴソゴソと蠢く音が聞こえた気がした。何か……いるの? 慌てて後ずさりしようとした足首が、強い力で拘束された──!?