「サリファ! お願いだから二人を放して!!」

 あたしは起き上がって二人の手前まで駆け寄った。手を伸ばしてもどうしてだか触れられない。これは幻影なんだろうか? 実体は何処か違う所にあるの!?

『リルヴィ、お前だけでも十分と思ったが……二人を得たのは好都合やも知れぬな? どうせ『ジュエル』は手放すしかないのさ。ウル達が来るまで……さて、われ等は何をして遊ぶ?』
「あ、遊ぶだなんて……意地悪しないで二人を返して! 返してあたし達を解放して!!」

 サリファはあたしの切望に、悪戯に(わら)っただけだった。『ラヴェンダー・ジュエル』と『動くための肉体』──二つが必要である以上、一つでも「あたし」という条件が手の内にあるのは、優位でいられる証拠だとしても……今までも今も、どうしてサリファはこうして猶予を与えているのか……あたしには彼女の真意が見えなかった。

『そうだな……では二人の内、どちらか一人なら返してやろう。リルヴィ、どちらを選ぶ? アシュリーとルクアルノ、お前はどちらを返してほしい?』
「どちらをって……! どっちもに決まってるじゃない!! だから早く二人をっ──」
『相変わらずつまらぬ答えだ。ジュエルも結局「全て」を求めた……それは何故だ? ジュエルは「全て」を欲っしたからではない……単に選べなかったからであろう?』
「……え?」

 途中でジュエルの話になったのはどういう意味? 全てが欲しかった訳でないのに、全てを求めた?? 選べなかったから? ジュエルが?? サリファは何が言いたいの!?