しばらくの沈黙のあと、パパはゆっくりと近付いた。お師匠様を立ち上がらせて、パパも挨拶とお礼を伝える。二十年ほど前、たった三年でも王様であったパパに、敬意を表したお師匠様の表情は、何処となく嬉しそうだった。

 それから全員が席に着き、何やら話が始まった。ピータンはアイガーの許へ預けられたようで、白黒の毛先が画面の下半分を覆う。次第に揺らいで狭くなったり広くなったり、ピータンはアイガーに包まれながら眠りについたようだった。

 パパ達、きっとあたし達を助けるための算段をするのだろうけれど、どうやってあの火口を降りるつもりなのだろう? 降りたところでどうやって逃げようというのだろう??

 あたしは見えなくなったヴィジョンに心細さを感じながら、辺りの暗闇に目を凝らした。あたしもアッシュとルクに一秒でも早く合流したい。でなければ助けが来ても、三人一緒に戻れない。

『何やら面白そうなモノを見ていたようじゃないか。本来なら……われがその力を手に入れておる筈なのに!』
「サ……サリファ!?」

 目の前の真っ暗な空間に、突如湧き上がるように赤い光が現れた。それはジワジワと広がって、今までと同じような光の柱となった。でも……中にいるのはもちろんママではなく、宙に浮かんで並ぶのは……悔しそうにこちらを見詰めるルクとアッシュだった。

「アッシュ! ルク!」
「リル……」
「ルヴィ!」

 三人の声は良く通り良く響いた。二人は後ろ手に縛られているような状態で、時々振りほどこうと身体を揺さぶるけれど、どうにも自由にはなれないみたいだ。