確かにお姉様がまだ十代の頃、先代王と王妃サリファの息子ウェスティは、タラお姉様の幼馴染であり睦まじい恋人だった。なのにウェスティは王位継承と共に豹変して、その「悪意」に気付いてしまったお姉様とパパの命を奪おうとしたのだ……更に十年後にはツパおばちゃんとママのことまで!

 無言で下を向いてしまったパパとツパおばちゃんの姿が、左右に行ったり来たり、交互に視界に映し出される。

 このコロコロ変わる『画面』の動き……どうもタラお姉様を中心に流れているような気がする。みんなのヴィジョンがあたしに伝わるのは、おそらく『ラヴェンダー・ジュエル』の力なのだろう。となれば『ジュエル』を呑み込んだピータンを、タラお姉様が左手にでも抱えているのに違いない。それならピータンは間違いなく大丈夫ってことだ!

『まったく……ツパイまで図星ってコト? ワタシにはシアンが居るのだから、もうそんな心配しなくてイイわヨ』

 呆れた口調でタラお姉様は溜息をついた。と途端画面がお姉様を見上げるように上昇したものの、瞬間真っ暗になってしまった。これって多分……シアンお兄様とのラブラブな光景に、ピータンが恥ずかしくなって目を塞いだんだな~……でもそれはシアンお兄様も無事だって証拠だ! 案の定再び現れた画面には、タラお姉様に寄り添うシアンお兄様の笑顔がうっすらと見えた。

『余計なお世話だったのなら一安心です。が……隠していたことは詫びねばなりませんね。タラ、失礼を致しました。そしてラヴェル……リルヴィを奪われてしまったこと、心より……謝ります』

 今度は右へ回転した画面が、深く低頭する青みがかった黒(ツパおばちゃんの)髪で一杯になった。

『ツパの所為じゃない。今更秘密裏に独りで動こうとした自分が悪いんだ。お陰でリルどころかアッシュとルクまで巻き込んでしまって……本当に申し訳ない』

 薄紫色(パパ)の髪が勢い良く垂れ下がり、それはアッシュの叔従父(いとこおじ)であるシアンお兄様と、ルクの伯母であるツパおばちゃんの正面で長く留められた。