「アッシュ……ルク……。ルクぅ……アッシュぅ……」

 四つん這いになって、掌に触れる地面を確かめながら、もう何度呼び掛けたか知れなかった。なのに一度とて返事は戻ってこない。やがてあたしはベソをかき出して、こんな泣き声じゃ見つかる者も見つかる訳がないのに、涙を止めることは出来なかった。

 徐々に暗闇に慣れ始めた瞳に、周囲の様子が微かに感じ取れてきたけれど、二人の姿は何処にも見当たらなかった。でもその事実に少しばかりホッとする。だってそれは大怪我をして気を失っているとか、こんなこと考えたくもないけど……死んでしまったってことではないのだもの。

「あたし……これからどうしたらいいの……?」

 両脇に膝を折り曲げて、ペタンと座り込んだあたしの声に、もちろん誰も応えてはくれない。

 逃げ道は確実に一つだけ見つかっている。あたし達の落ちてきた火口の頂点。あたしはゆっくり頭をもたげ、その小さな穴を見上げた。遥か遠くに感じる切り取られた空。でも登るための手段は見つからないし、パパ達がロープを垂らしてくる様子もない。二日半も掛かって登った山だもの、何処まで落ちたのかは分からないけれど、そんな長いロープ簡単に調達出来るとは思えなかった。