どれくらい落下して、どれくらいの時が経ったのだろう……?

 火口の真中にそそり立った赤い光の柱。重力に逆らうことも出来ず、その中を流れ落ちたあたしは、気付けば仰向けで横たわっていた。

 右眼に見えるのは真っ黒な暗がりと、遠く真ん中に小さな丸い明かり。きっと火口の入り口だ……パパ達はまだそこにいるんだろうか? 心配しながら下を覗いているの?

「いったた……」

 あたしはだるそうに上半身を起こした。サリファの魔法なのか、何処も怪我はしていないみたい。でもどうしてだか赤い光は見当たらなかった。そして、そうだ……ルクとアッシュは!?

「アッシュ! ルク!」

 二人の名は周りの闇に異様に反響した。返ってくるのはあたしの叫びばかりで、返ってこない応答が、あたしの胸を一息に締めつける。二人も一緒に落ちた筈。あたしは慌てて地べたを探った。光の柱を滑ってきたのなら、近くにいるのに違いないのだから!

「ルク!! アッシュ!! お願いだから返事してっ!!」

 掌が感じるのは山頂と同じく固い岩盤だった。冷たい感触に温かく柔らかい人肌を求めて、とにかく辺り構わず手を伸ばした。

 ねぇ、二人共、いつもの優しい声で「大丈夫だよ」って言ってよ……ねぇ……お願い! 一生のお願いだから──!!



   ■第六章■ TO THE SUMMIT (山頂へ)! ──完──