逆を言えばジュエルを外してしまうと、あたしの髪色はたちまちピンク・グレーに戻る。パパもママもそんなあたしを、昔のママを思い出して懐かしそうに見詰めるけれど……まぁね、あたしも嫌いじゃないよ、この色。

 あたしは『視えない』義眼を挿し込んで、左の瞼をパチパチと瞬いた。

 半分になった視界は前回ヴェルに行った三年前以来だから、慣れるのには少し時間が掛かるだろう。

 いつもありがとう──ジュエル。

 あたしはふと保管庫へ振り向いて、中に隠されたジュエルにお礼を言った。

 これから数日間、ゆっくりと眠っていてね。自分の故郷(ふるさと)に優しく(いだ)かれて。

 そうして保管庫を自分の寝台カプセルに運びながら、あたしはニヤリと笑ってみせた。

 本当は知ってるんだージュエルの秘密!

 ジュエルはあたしを宿主にしたかった訳じゃない。

 別にあのままパパでも構わなかったのだ。
 
 でも、ね。ほら、良ーく考えてみて? ママってきっとパパよりベイビーと一緒にいるものでしょ?

 あたしが宿主になればジュエルはいつでも幾らでも、今まで以上に微笑み掛けてもらえるのだ。

 自分が一番恋人にしたかった、あたしのママの碧い瞳に──!!