幻影ママの言葉に、パパは図星といった表情で言葉を詰まらせ、同時にあたしは小さく驚きの声を洩らしていた。でも……これってどういうこと? サリファが自分を消されないように、ママの幻影を使って誘導しているとも思えるけれど、あの必死なママの叫び、まるで本物のママみたいだ!

「ルヴィ、ボクが真実を伝えに行ってくるよ。二人はココで隠れていて」

 あたしは頭を混乱させたまま、幻影ママの言葉を反芻(はんすう)した。岩に掴まって固まったあたしの背中に、ルクが振り絞った声で語り掛ける。振り返れば既に剣を抜いた、いつになく真顔のルクが立っていた。

「で、でも……ちょっと待って。何だか何かが間違っている気が……」

 何だろう、このスッキリしない気持ち。ルクを引き止めながら、右眼がキョロキョロと動いてしまった。ママはちゃんとココにいる。あたしの横で、みんなとあたしを心配しながら。今でも止まったままの目の前の光景に、眼を見張り耳を澄ませながら。ママの掌は今までと同じ柔らかさを保って、今までと同じく温かかった……なのにあたしは何を不自然に感じているの?

「ルヴィ、此処はルクアルノに任せましょう。ルクアルノ、わたしが(おとり)になるから、その間に飛び出してちょうだい」
「ママ……?」

 ──ルクアルノ。

 そうだ……今まで「ココにいるママ」は、ルクの名前を呼ばなかったから気付かなかった! いつものママはルクをあたしと同じように「ルク」と呼ぶ。それじゃあ今あたしの真ん前のママは!?

「あ、あなたは……?」
「「……ルヴィ??」」

 このママは一体何者なの──!?