「ル……ヴィ──」
「ス、ストップ! ルク!!」
「──わっ!!」

 視界の真ん中まず目に留まったのは、あのザイーダと同じホワイト・ゴールド。けれどそれはその全身を覆ってはいなかった。細い身体があたしを「ルヴィ」と呼んで、目の前の草むらに倒れ込んだ。慌てて叫んだあたしの制止の声に、ルクの剣がギリギリ反応する! 間一髪その切っ先は(くう)を斬り、何物も傷つけない内にしまわれた。

「マ……ママ!? ママっ!!」

 ああ……あたしの足先に向け手を伸ばしたその背中は、まさしくママの後ろ姿だった! (さら)われた時に身に着けていた白いガウンは、土や葉片で汚れていて、大きく荒く吐き出される息も、必死に逃げてきたことを物語っていた。そんな疲れ切った弱々しい様子に、あたしは駆け寄りしゃがみ込んだ。

「ママ! ねっ、大丈夫!? ママっ! ママ!!」

 ママは右の頬を地面に触れさせたまま、数回咳き込んだのち落ち着いた。閉じられた瞼がゆっくりと開く。やがてぼんやりとしていた視線が、心配そうに応答を待つあたしを一心に捉えた。

「……ル……ヴィ……良かった、無事……だったの、ね……」
「ママっ!!」

 何とか上半身を起こしたママは、まだ辛いだろうに胸の内へあたしを寄せて、柔らかく抱き締めてくれた!

 ママ……無事だった上に、まさかサリファから逃れた状態で会えるだなんて……本当に、本当に良かったよ!!