あたしは二人の笑顔に育てられたんだ。アッシュが話してくれたように、パパとママの愛情があたしを輝かせてくれていた。だから失くしちゃいけない。あたしが笑顔を失くしたら、二人も輝きを失ってしまうもの!

「行こう、ルク。きっとみんなも無事に戻ってくるよ」
「うん、そうだね。ボクもちゃんとルヴィを守る」

 いつぞや見せた奇跡のたくましさが、ふとルクの眼差しに宿された気がした。その瞬間キュンと鼻の頭が痛くなったのは何故だろう? 合わせた視線を不思議と逸らしてしまう。そんな揺れる瞳を向けた進行方向、少し先のこんもりとした繁みが、白いザイーダに襲われた時のようにザワザワと揺らいで……

「ルヴィ……下がって」
「う、うん」

 小声で囁いたルクが、(かば)うようにあたしを背後へ回した。左腰に結わえた剣を、鞘からそっと抜いて構えた。

 またザイーダが現れたのだろうか? ママの髪を使って。ママの心を哀しませながら。

 繁みを揺らす音は、奥から手前へと徐々に大きくなってくる。

 ついに全貌が緑の海から現れたその時!

 頭上から振り被ったルクの剣が、大きな弧を描こうとした──!!