「う……うそっ──!」

 パパが……伯母(サリファ)従兄(ウェスティ)に操られていたなんて!?

 あたしは勢い良くパパの横顔へ振り向いた。

 視線に気付いているのに、パパはあたしと目を合わせなかった。

 話を止めた正面のツパおばちゃんをひたすら見詰めて……その口元は何も語ろうとせず、ただ引き締められていた。

「ここからは私の推測に過ぎませんが、現状ラヴェルやタラが操られていないことから見ても、サリファがその力を発動するには、彼女自身に実体が必要なのかも知れません。もしくはウェスティのような「名の許可を得た人物」に、サリファが力を与えることによって実行していた、という可能性もないとは限りませんが。二十年前、ユスリハと旅していたラヴェルの肉体を、ウェスティが一度乗っ取ったことがありました。その要因がもし後者であるとすれば、実際その力を保持しているのはサリファのみ、ということにもなりますね。だからこそウェスティは──……、……ああ……いえ」
「??」

 突如言葉を濁して口ごもったおばちゃんに、途端周りの空気が滞った気がした。

 おばちゃん? 今、何を言おうとしたの??

「……すみません、これは後に回しましょう。ともかく……二人と同じく私の名も、後半の名「ノーム」をサリファに捕えられてしまった訳です。何よりその名を授けたのがサリファ自身でした。私は……つまり、彼女の奴隷となるべくして生まれたのです」
「奴、隷……」

 アッシュなのか、ルクなのか……誰かの声が呆然としながら繰り返した。

 驚きで震えるあたしの唇からは、それすらも発することは出来なかった──。