「は、はい……どうやら無事のようです」

 いつも通りの静かな答えと一緒に、おばちゃんが気だるそうに起き上がった。アイガーも気絶していたことに自身でも驚いたみたいだ。突然横倒しの身体を飛び跳ねさせて、大丈夫と伝えるように元気に吠えた。

「アッシュ! ルク! 大丈夫か!?」

 あたしの右側ではパパが二人を揺さぶっている。先に目を覚ましたのはルクだった。まだぼんやりと(うつ)ろな瞳がこちらを向いた瞬間、ルクは正気を取り戻したようだった。でも……?

「あ……あっ……ああ……あああ──っ!!」

 その顔を真っ赤にして、いきなり叫び出したのは一体何故?

 釣られて振り返ったパパと、意識を取り戻して上半身を持ち上げたアッシュの瞳が、ルクの視線を追って驚き、瞬時に硬直する。……って??

「あっ、やだっ!!」

 あたしは三人の見ている先を辿り、慌てて胸元を両腕で覆った。そうだった……あたし、バスタオル一枚だ……!!

「リ、リル! 早く服を着てきなさい。ルク、アッシュ……これ以上、娘を見たら──斬る!!」

 い、いやぁ~パパ、そこまで言わなくても!?

 本気だと示すように、パパは剣を抜き立ち上がった。あたしを隠すように仁王立ちに背を向け、二人の前で剣を頭上に構える。いえいえパパ~もうルクは鼻血出して卒倒してるし、アッシュも急いでそっぽを向いたんだから……。

「ご、ごめんね、みんな! それじゃ……」

 とにかくパパの気を鎮めるためにも、早く着替えに行かなくちゃ! あたしはおばちゃんの目の前でしゃがみ込んでいた身体を、一気に持ち上げ……なのに、あらら? 一緒について来る筈のバスタオルが!?

「きっ……きゃあああああっ!!」

 あたしの足はタオルの端を踏んづけていた! 立ち上がったあたしの胸から、バスタオルが……スルリと落ちた──!?