「うわ~やっぱりっ、視界が狭い!」

 あたしは二人へ振り向いて、船内をグルリと見渡した。もちろん左の瞼は閉じたままだ。

「リル、義眼を用意してから外しなさい。女の子なんだから」

 パパは慌てて立ち上がり、自分の荷物の中からあたし用の義眼を探し出した。女の子なんだからって……まるで服でも脱いじゃったみたいな物言いだ。

「なんかバランス悪~! パパって良くこんな状態で家事や仕事が出来るものね?」

 取り出された義眼を受け取りに数歩進んでみたけれど、まるで歩き始めたばかりの赤ちゃんみたいに、おぼつかない足取りになってしまった。

「まあね。でも『ジュエル』が君を選んだのだから仕方がない。こちらは元々生まれた時からの十八年と、君が生まれてからの十四年、ずっと片目のままなんだ。もう慣れたものだよ」

 そうパパは笑って義眼を差し出したけれど、ジュエルを継承してからの約九年(……の内の二年弱は眠っていたとはいえ)、パパは普通の人よりも『()える』生活をしていたのだ。あたしに『ジュエル』を譲った時は、きっと色々と支障があったに違いない。