ルクは鼻の下を人差し指で(こす)り、バツの悪そうな苦笑いをした。あたしは呆れ顔で腰を上げ、テントの外で背伸びをする。辺りを淡い(もや)が立ち込めて、幻想的な雰囲気が漂っている。

 振り向けば遠くにその『目隠し』が見えた。ブランケットやタオルを利用したのだろう、木々の枝に上手に渡して、小振りながら立派な簡易個室が出来上がっていた。

「おはよう、リル。良く眠れた?」

 ずっと左へ視線を逸らした先の焚き火に、二人と一匹のシルエットが見えた。静まり返った煙る森が、そこだけ赤々として鮮やかな色だ。

「うん。おはよう、アッシュ、ツパおばちゃん、アイガー」

 いる筈のないパパとママの影も、つい探してしまった。ママ、どうか無事でいて……そしてパパに早く追いつきたい。追いついて一緒にママを助け出したい。

「準備は出来ているから。お湯が冷めない内にどうぞ」
「う、うん。ありがとう、アッシュ。あの、ツパおばちゃんも、本当にいいの?」
「私も先程髪だけは洗わせてもらいました。あとはリルヴィが終えた後に、身体を拭けたら十分です。どうぞ行ってらっしゃい」
「うん……じゃあ、お言葉に甘えて」