「お師匠様って何歳? 名前も教えてよ~」
「そのようなこと、リルヴィにはお教え致しません!」
「えーどうしてぇ? 内緒にすることなんてないのに~」

 あれだけの弓を操る人だ。きっと筋肉ムキムキでカッコイイに違いない!

 あ? でも──

「もしかしてツパおばちゃん……自分がずっと年上なのを気にしてるの?」
「えっ? い、いえ……」

 おばちゃんは二十代後半に見えても、実際中身は五十歳ちょっとだ。そんなことが恋に踏み出せない壁になっているのなら。

「歳なんて関係ないと思うんだけど……おばちゃんは時間を止められていたのだもの、本当の年齢は止まった時間を引いた分だよ」
「いいえ。肉体以外、私の実齢はやはり五十一歳であるように自身でも感じているのです……あ! い、いえ、それが問題なのではなく……。師はお若くとも、穏やかで冷静で、物事を客観的に見定められる大らかな気質をお持ちです。ああいうお方は──」
「まさしくツパおばちゃんにピッタリじゃない!」
「え? あっ、いや、そういうお話ではなくて!!」

 おばちゃんはあたしのツッコミに、もう(らち)が明かないと思ったのだろうか、真っ赤な顔をそっぽへ向けて、逃げ出すように立ち上がってしまった。それでも数歩進んだ先で、何かに気付いたようにふと足を止めた。

 あれ……振り向いたのは、あたしとおんなじ「したり顔」……??