「残念ですが、今夜は此処までに致しましょう。これ以上進んでも、安心して休める場所が見つかるとは思えません。今宵は私と……アイガーも見張りに参加します。ルクアルノ、アシュリー、宜しいですね?」

 ツパおばちゃんは森の途切れる手前で振り返り、日暮れる空を背に全員に告げた。無言で頷くルクとアッシュ。やっぱりあたしは除外なのかぁ……自分でも余り戦力になれる気はしていなかったけど、初めから人数に入れられていないのは、分かっていても心に(こた)えた。

「「あの……おばさん」」

 とあたしが意気消沈してしまったところ、同時に同じ言葉を発したのはアッシュとルクだった。

 垂れ始めていた首をおもむろに戻す。目の前の二人も声が揃ったことに驚いたのか、お互い「お先にどうぞ」とばかり、微妙な視線を送り合っていた。

「じゃ、じゃあ、ボクから……えと、あの……今夜の見張り、ル、ルヴィにも参加してもらってはダメですか……?」

 ──ルク……?

「僕も同じことをお願いするつもりでした。二晩目ともなれば、独りでの見張りは眠ってしまわないとも限らない。でも二人一組で交代すれば、その確率は低くなります」

 ──……アッシュ。

 それぞれ言い終えたのち再び瞳を合わせ、二人は微かに笑ったようだった。これってその……あたしを(おもんばか)ってくれたのよね? 何も役に立てていないあたしが、独り落ち込まないように。

「そうですね……では、リルヴィも合わせて四人と一匹、奇数ですから私が二度見張りましょう。組と順序はとりあえず後で……まずは夕食の準備です。リルヴィ、今夜の献立はお任せ致しますよ?」
「え? ……は、はいっ!」

 ツパおばちゃんの相変わらず抑揚のない口調は変わらなかったけれど。

 最後の尻上がりな問い掛けに、あたしは一瞬驚いて、すぐさま明るく返事をした。おばちゃんもあたしの意を汲んでくれたのだろう。

 みんなが応援してくれているんだ。あたしもちゃんと頑張らなくちゃ! そのためにも──どうか『ジュエル』、早くあたしの『力』を目覚めさせて──!!