「ル、ヴィ? だ、大丈夫? 怪我してない??」

 バカ。怪我してるのか訊いているのはこっちなのに! 人の心配ばっかりして……!!

「……うん。大丈夫だよ……心配掛けてごめん」

 心の中で怒鳴った言葉は、喉から飛び出す前に呑み干して、あたしはぎこちない笑顔を作った。全てを拭き終えたアッシュが、こちらを向いて手招きをする。見ればルクの手は小刻みに震えていた。実戦なんて初めてだった筈……あたしはアッシュに促されて、彼の両手を強く握り締めた。冷たい肌が次第にあたしの掌の熱を吸い取っていく。こんなこと……ルクにもアッシュにもさせたくなかった……ごめんね、本当に……本当に、ごめん。

「ルヴィの手……あ、あったかくて……気持ち、い──」
「ルク……?」

 手元から上げた視線に、入ったのはルクの寝顔。

 すぐ後ろの幹に寄り掛かったまま、ルクは微笑みを(たた)えて眠りこけていた。

「ごめんね、ルク……ありがと……」

 あたしは彼の腰に腕を回して、胸の中で涙を(こら)えた──。



[註1]アイガーの愛妻「ホルン」の名:アイガー同様、スイスの山「マッターホルン」から戴いてみました♪



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