まだぼんやりとしか見えないどちらの結論も、アッシュは鮮明にするつもりはなかったみたいだ。戸惑ったままのあたしに答えることなく、「明日も早いから、もう休んだ方がいい」と戻るよう促した。

「さ……良く眠って。僕ももう少ししたらルクと交代して休むから」
「う、うん。本当にありがとう、アッシュ。あたし達のために来てくれて。あたしを連れて来てくれて」

 これ以上アッシュの時間を邪魔しちゃいけない。あたしはそう思い、急いで腰を立ち上げた。お互いの目の高さがちょうど合ったその刹那──

「おやすみ、リル。また明日」

 ──……え?

 アッシュの温かな右手があたしの左頬を包み込んで、右の頬には……柔らかな唇が僅かに触れた。

 彼からの「おやすみの頬にキス」なんて、今までにもなかった訳じゃない。

 でも……。

 驚いてしまうくらい近かったのだ! あたしの唇の右端に!!
 
「……お……、おやすみ……っ!」

 咄嗟にすっとんきょうな声を上げて、あたしは勢い良く身を(ひるがえ)した! まるで逃げるように足が勝手に動き出して……

 出来るなら、すぐさま鏡で自分の顔を確認したかった……あたしの頬は、燃える炎のように赤くなってはいなかったかしら?? と──!!