「リル……? 眠れないの?」

 それから──。

 あたし達はとにかく歩き、とにかくシュクリを登り続けた。

 進む東路はずっとなだらかな傾斜の森で、「これなら楽勝じゃない!」とあたしはほくそ笑んだくらいだ。あれだけ歩いたのだから相当山頂に近付けたと思っていたのに……何処まで行っても、どんなに見上げても、お山のてっぺんはまだまだ遠くて……気付けば息切らし肩で呼吸してしまう始末だった。見かねたツパおばちゃんが一休憩させてくれて、その間にどんどん登りつめたアッシュとルクがお先に野営を張り、あたしの拾った枝で火を起こしておいてくれた。お陰で二人の場所に何とか辿り着いた頃には、遅い夕食の準備も整いつつあった。

 食事を済ませたあたしはバッタリとテントに倒れ込み、いつの間にか死んだように眠りこけてしまった。

 サリファからの攻撃を考慮して、山頂に一番近い場所へテントを張ってもらったので、今頃はみんなもあたしの眼下で休んでいるだろう。

 あたしのテントはコンパクトな一人用、ツパおばちゃんは昨夜と同じく星空の(もと)、寝袋でアイガーと一緒に休むと言っていたっけ。アッシュとルクは二人用のテントを持っていたものの、ルクが上空から落とした際に、骨組みがかなり曲がってしまった。応急処置でどうにか一人は入れるようになったので、交代で火の見張りをすると言っていたけれど──どうやら今はアッシュがその係を務めているみたい。

「ううん……良く眠れたよ。ごめんなさい……いきなり迷惑掛けて……」

 (たきぎ)のぱりんと()ぜる音でふと目覚め、外へ出たあたしに、炎に照らされた優しい笑顔が問い掛ける。申し訳なさそうに俯くあたしのへの字口も、温かな光できっと気付かれちゃっただろうな。