冷たい笑みはまるで悪魔そのもの。私の心は完全に凍りつき、この状況を見守るしかできなかった。

「いや、ありえない。だってあれは、僕の、ううん、神城グループの力で、ようやく手に入れた情報だよ」
「私の手のひらで遊ばれてるとも知らずに、ね? いいこと、たかが人間ごときが、魔性国の姫と結婚など許されるわけないでしょ」

 お願い、私の体よ、動いて! 佳奈さんにその先を言われたくない。だって、もし龍二が知ってしまったら……。

 必死に体を動かそうとするも、鎖に縛られたように体がまったく動かなかった。言葉を出そうにも、声が出る気配すらなかったのだ。

「それらどういう意味なんです。その言い方だとまるで……」
「あら、人間にしては勘がいいのね、ボウヤ。魔性国とは、遥か昔より、この地球で男たちを傀儡にして遊んでいたのよ。それが私たちの宿命。そして、その頂点に君臨するのが……」

 私の瞳からは涙があふれだしていた。もう、佳奈さんを止める手段はない。目を瞑り覚悟を決めるしかない。私は天に祈るように、静かに瞳を閉じた。

「女王エム、そして、その娘であり姫でもある神楽耶様なのだよ。下賎な人間と結ばれるなど、あってはならぬことだ」
「えっ……。神楽耶が、月の民、だって。それじゃ、魔性国のお姫様……」

 耳を塞ぎたくなるような状況。
 私は大粒の涙をこぼし、龍二は……完全に固まってしまった。