「気がついたかい? ハニーが突然倒れるから、ビックリしたよ」
「うぅ、龍二……。私は、何者なの……」

 いつの間にか、私は車へと運ばれていた。スッキリしない頭で、絞り出したのは自分が何者という言葉。心には闇が覆いかぶさり、私を失意のどん底へと引きずり込もうとする。

 あの赤ちゃんは神楽耶と言う名前だった。私と同じ名前……。ううん、きっと漢字が違うのよ、それに苗字だって。でも、心に引っかかるこの不安はいったい……。

 どんなポジティブ思考を用いようとも、すべてがネガティブへと変換される。次第に私の思考は停止しようとしていた。

「ハニー、僕はキミが何者であろうと、この気持ちが変わることはないさ。それにさ、僕はどんなことをしてでも、キミを守るから」
「龍二……。私、私……」

 私の意思ではない。自然と体が動き、龍二の胸を湿らせる。言葉にならない声に彼は、優しく私の頭を撫でてくれた。

「少しは落ち着いたかい?」
「うん……」
「今日はもう遅いから、家まで送るよ」
「……龍二、私、ひとりになりたくない。お願い、今日は龍二の家に泊めさせて欲しいの。ダメ、かなっ」

 初めてかもしれない。私は素直な気持ちを龍二に伝えられた。鼓動が激しくなり、体全体に温かさを感じ始めた。私は涙を流したまま拭うことなく、彼の瞳を見つめていた。

「それは構わないさ、ハニー。部屋なら売るほどあるからね」
「ありがと、龍二……」

 私は目を瞑り、龍二の肩にそっと寄り添った。彼の温もりは私に安心感を与え、その居心地のよさで自然と目が閉じてしまう。

 気持ちがいい……。この温もりは絶対に失いたくない。ううん、龍二から離れるなんて、私にはもうできないよ。

 私は夢の中で、龍二との甘い時間をすごしていた。