プロローグ
 私の名は月姫神楽耶、今年から舞星高校に通う高校一年生。遠く離れたこの地で、ひとり暮らしをする普通の女子高生よ。

 頭脳明晰、運動神経抜群、おまけに自他ともに認める絶世の美女であるこの私が、なぜ、この遠く離れた辺境の学校に通わなければならないのか。
 その理由は──。

「そこのオジョーサン、学校なんてつまならないもの、サボって僕とドライブに行きませんかー?」

 毎度のことだが、歩く度にナンパされるのだ。今日もこれで十件目のナンパ。しかも、お世辞にもカッコイイとは思えない男など、私が相手にするわけなく……。

「自分の顔を見たことあるのかしら? いいえ、鏡すらその姿を拒絶してるのね。哀れ、哀れすぎるわよ。ですから……私の前から今すぐ消え去りなさい!」
「ひ、ひぃぃぃぃ。す、すみませんでしたー」

 この調子が学校まで続いたら遅刻は決定的ね。『ナンパされて遅刻しました』なんて言い訳が通るのかしら。中学のときもそうでしたけど、ホント、めんどくさいわね。

「そこのお嬢さん、舞星高校に行かれるのですか? もしよろしかったら……」

 また、ですか……。こんなド田舎では美女なんていないのかしらね。でも、私と比べてしまったら、すべてがゴミと同じですけれど。

「ええ、私は歩いて高校まで向かうつもり。ですから……」

 黒塗りの車から顔を出す男子生徒。控えめに言ってイケメンかしら。金髪で少しチャラそうですけど。どのみち、この男だって所詮は私のオモチャになるんですけどね。

 だって、私にはこの不思議な力があるのですから。
 この……魔性の力がね。