心配だ、という顔をしながら、胡桃が話しかけてきたのだ。
「大丈夫。ありがと。大丈夫が良くないって、どういうことなの?」
「大丈夫って聞かれたら、大丈夫じゃない人は絶対『大丈夫』っていうんだって。そういう事を、聞いたなと思って」
「…えっと、ほんとに大丈夫だよ?」
「う、うん、そうなんだろうけど…その…」
ごにょごにょと、何かを言いたそうにもじもじしている。
「その?」
「あの…ほんとに困ったときは、その、言ってほしいっていうか…」
恥ずかしそうに目を伏せながら、呟きに近い声で、絞り出すように言った。可愛すぎる。
「いうよ。だから、胡桃は笑っててね」
「え、なんで、今の話からいきなり…?」
話が変わったことに混乱している彼女に、さらに言葉をかぶせる。
「胡桃、さっきから悲しそうな顔してるから」
「え、、え?」
「俺は大丈夫だからさ。杉原に嫌われたところで、痛くもかゆくもない」
「う、うん…?わかった…」
納得がいかない、という顔をしながらも、渋々というように頷いてくる胡桃の頭に、思わず手を伸ばしてしまう。
「じゃあな。ありがとう」
ぽんぽん、と軽く手をのせ、彼女をその場に残して歩き出す。
「うん…」
小さな返事が背中越しに聞こえてきた。正直、頭を撫でてしまったのは、自分でもびっくりした。
自分のことでもないのに、小さくなって謝る彼女があまりにも儚げで、消えてしまいそうだったからだと、思う。
比喩表現ではあるが、本当に消えてしまいそうだったのだ。
思わぬところで発揮された自分の行動力を恨みながら、教室へと続く廊下を早足で歩いていった。
ー昼休み。最近、胡桃のそばの席になってよく胡桃と喋っている、佑樹のところといってみる。
「佑樹。くる…天宮さんどこにいったか、知らね?」
「もー、隠さずに言えば?胡桃ちゃん、でしょ?」
いつもと変わらないニコニコ笑顔を向けてくるが、長年の付き合いの俺にはわかることがある。それは、この笑顔が人を揶揄うときに浮かべる、悪魔の微笑みだということだ。
「大丈夫。ありがと。大丈夫が良くないって、どういうことなの?」
「大丈夫って聞かれたら、大丈夫じゃない人は絶対『大丈夫』っていうんだって。そういう事を、聞いたなと思って」
「…えっと、ほんとに大丈夫だよ?」
「う、うん、そうなんだろうけど…その…」
ごにょごにょと、何かを言いたそうにもじもじしている。
「その?」
「あの…ほんとに困ったときは、その、言ってほしいっていうか…」
恥ずかしそうに目を伏せながら、呟きに近い声で、絞り出すように言った。可愛すぎる。
「いうよ。だから、胡桃は笑っててね」
「え、なんで、今の話からいきなり…?」
話が変わったことに混乱している彼女に、さらに言葉をかぶせる。
「胡桃、さっきから悲しそうな顔してるから」
「え、、え?」
「俺は大丈夫だからさ。杉原に嫌われたところで、痛くもかゆくもない」
「う、うん…?わかった…」
納得がいかない、という顔をしながらも、渋々というように頷いてくる胡桃の頭に、思わず手を伸ばしてしまう。
「じゃあな。ありがとう」
ぽんぽん、と軽く手をのせ、彼女をその場に残して歩き出す。
「うん…」
小さな返事が背中越しに聞こえてきた。正直、頭を撫でてしまったのは、自分でもびっくりした。
自分のことでもないのに、小さくなって謝る彼女があまりにも儚げで、消えてしまいそうだったからだと、思う。
比喩表現ではあるが、本当に消えてしまいそうだったのだ。
思わぬところで発揮された自分の行動力を恨みながら、教室へと続く廊下を早足で歩いていった。
ー昼休み。最近、胡桃のそばの席になってよく胡桃と喋っている、佑樹のところといってみる。
「佑樹。くる…天宮さんどこにいったか、知らね?」
「もー、隠さずに言えば?胡桃ちゃん、でしょ?」
いつもと変わらないニコニコ笑顔を向けてくるが、長年の付き合いの俺にはわかることがある。それは、この笑顔が人を揶揄うときに浮かべる、悪魔の微笑みだということだ。



