***
「お、おはよー…」
恐る恐るというような声に振り返ると、長い黒髪をサラッと靡かせた美少女が俺の後ろに立っていた。
「おはよ」
「あ、あの、さ…」
少し肩身狭そうにしながら、大きなくっきり二重の瞳で上目遣いで見上げてくる胡桃に、心中ドキドキしながらも笑みを浮かべた。
「なんかあった?」
「うん、あの…昨日、傘、忘れて行ってたから…これ」
俺に差し出してきたのは、小さめの紙袋だった。
「わざわざありがと」
「ううん…じゃあ」
渡すだけ渡し、胡桃はそそくさと自分の席に戻って行った。
すると、すぐさまに飛んできたのは、二見、安斎と杉原だった。
「ねぇ、クルミちゃんとなに話してたのぉ?」
「…貸した傘を返してもらっただけだよ」
できるだけ笑みを貼り付けながら、杉原に返答する。
「えー、でも、仲良さそうだったよ?昨日、なんかあったの?」
「何も。妹さんでしょ?優しいね。」
「はぁ?ほんとにそんなこと、思ってんの?猫被られてるよ〜」
本当にムカつく。安斎は敵意剥き出しだし、二見は語尾をのばして話すから、鼻につく。
「アイちゃん、汚い言葉を使うのはだめよ…クルミちゃんはいい子よ。でも、少し…男好きって言われる部分があるかな?だから、松本くんも気をつけたほうがいいよ?」
杉原は、安斎をたしなめつつも、俺に胡桃の噂を吹き込んでくる。杉原は悪い人ではないのだが、そういうところは好きではない。
「俺の人付き合いに君たちは関係あるの?ないよね。天宮がそう言う人なのかどうかは自分で判断するから」
キツすぎる言葉を使ってしまわないよう、出来るだけ突き放した。しかし、杉原は違う方法に出てきた。
「…っ…」
じわりと涙を滲ませ、俺をキッと睨んできた。そして、両手で顔を覆い、大げさに泣いてきたのだ。
「かりん!泣かないで!…っ、全部あいつのせいよ…!」
「マジ意味わかんない。なんで松本くんはあいつのこと庇ってんの?人生損してる」
花梨は悪くないよ、と必死に慰めている安斎と二見だったが、そんな様子を見て余計にイライラしてくる。
「…ごめん、用事あるから」
思わず席を立ち、足早に教室を出る。だからといって行くあてがあるわけではなく、廊下を歩いていると。
「…き、…あき、千秋!」
芯がしっかりした、よく通る声が俺を引き留めた。
「大丈夫?って、大丈夫って聞くのは良くないって聞いたような…?ま、まあ、花梨ちゃんのことは気にしないでいいよ、いっつもあんな感じだし」
「お、おはよー…」
恐る恐るというような声に振り返ると、長い黒髪をサラッと靡かせた美少女が俺の後ろに立っていた。
「おはよ」
「あ、あの、さ…」
少し肩身狭そうにしながら、大きなくっきり二重の瞳で上目遣いで見上げてくる胡桃に、心中ドキドキしながらも笑みを浮かべた。
「なんかあった?」
「うん、あの…昨日、傘、忘れて行ってたから…これ」
俺に差し出してきたのは、小さめの紙袋だった。
「わざわざありがと」
「ううん…じゃあ」
渡すだけ渡し、胡桃はそそくさと自分の席に戻って行った。
すると、すぐさまに飛んできたのは、二見、安斎と杉原だった。
「ねぇ、クルミちゃんとなに話してたのぉ?」
「…貸した傘を返してもらっただけだよ」
できるだけ笑みを貼り付けながら、杉原に返答する。
「えー、でも、仲良さそうだったよ?昨日、なんかあったの?」
「何も。妹さんでしょ?優しいね。」
「はぁ?ほんとにそんなこと、思ってんの?猫被られてるよ〜」
本当にムカつく。安斎は敵意剥き出しだし、二見は語尾をのばして話すから、鼻につく。
「アイちゃん、汚い言葉を使うのはだめよ…クルミちゃんはいい子よ。でも、少し…男好きって言われる部分があるかな?だから、松本くんも気をつけたほうがいいよ?」
杉原は、安斎をたしなめつつも、俺に胡桃の噂を吹き込んでくる。杉原は悪い人ではないのだが、そういうところは好きではない。
「俺の人付き合いに君たちは関係あるの?ないよね。天宮がそう言う人なのかどうかは自分で判断するから」
キツすぎる言葉を使ってしまわないよう、出来るだけ突き放した。しかし、杉原は違う方法に出てきた。
「…っ…」
じわりと涙を滲ませ、俺をキッと睨んできた。そして、両手で顔を覆い、大げさに泣いてきたのだ。
「かりん!泣かないで!…っ、全部あいつのせいよ…!」
「マジ意味わかんない。なんで松本くんはあいつのこと庇ってんの?人生損してる」
花梨は悪くないよ、と必死に慰めている安斎と二見だったが、そんな様子を見て余計にイライラしてくる。
「…ごめん、用事あるから」
思わず席を立ち、足早に教室を出る。だからといって行くあてがあるわけではなく、廊下を歩いていると。
「…き、…あき、千秋!」
芯がしっかりした、よく通る声が俺を引き留めた。
「大丈夫?って、大丈夫って聞くのは良くないって聞いたような…?ま、まあ、花梨ちゃんのことは気にしないでいいよ、いっつもあんな感じだし」



