少しして教室に一つの人影が見えた。
ふと足を止め、落ちている紙屑を拾い上げ、シワを伸ばす。いくらかマシになった紙にさっと目を通した人影は、穏やかな笑みをたたえた。
「ー成海か。かわいーヤツ」
その紙を丁寧に折りたたみ、自分の胸ポケットに仕舞い込む。そして、自席に置いてあったバッグを片手に持つと、紙屑の持ち主を追いかけるように教室を出ていった。