八咫烏《ヤタガラス》



残念ながら、あたしは人を助けるような善人ヒーローではない。


正直言うと、見て見ぬふりをして、Uターンするのが得策。


それが、人間として、クズな所業だとしても。


最低だなと言われるような行動だとしても。


だけど、彼女の思い描くあたしという像は、そこまで落ちぶれてない。


いや、本来のあたしなら、絶対に、知らないふりして見逃すし、確実に面倒事を避けるクズなんだけど、学校での偽りのあたしは違う。


いい子ぶる優等生はそんなことしない。思い描かれるのは、きっとサラリと助けてしまうような善人で。


まぁ、どちらにせよ、あたしのキャラじゃない。ヒーローもクズも。表も裏も。




そう。これは、あたしの気まぐれであり、もしもの場合のため。


優等生として過ごすために必要な策。あたしの面子を守るための手段。それでしかない。


まぁ、誰もあたしと認識せずに、仲裁できれば1番いいんだけど。


着ていたパーカーの首元を掴み、顔を隠すようにフードを被る。


人からの借り物ということで、ワンサイズどころじゃなく大きなパーカー。


これ、汚したら凄く怒られるんだろうなぁ、なんて頭の隅で考える。


それも残念なことに、白いし。


あー、ヤダヤダ。あのきったない壁に押さえつけられる(まぁ死んでも嫌だけど)のも無理。返り血でさえつけられない。


あー、面倒なこと、この上ないじゃない。ほんと、嫌になる。


悪態をつきながらも、あたしは、これからの行動を変えるつもりはなかった。



被ったフードが、あたしの顔をそっと隠した。